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月別アーカイブ: 2025年8月

第20回食品加工雑学講座

皆さんこんにちは!

合同会社Alba、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~高品質~

 

高品質=規格適合 × 安全 × 体験価値 × 安定供給
この4要素を仕組みで回し、再現性高く出荷し続けることが食品加工における“本当の品質”です。本稿は、現場でそのまま使える設計思想・運用・評価・改善の型をまとめた実務ガイドです。


1. 高品質の設計思想:上流で決まる

  • 顧客品質(QFD):ターゲット顧客の「おいしさ条件(食感/香り/見た目/食べやすさ)」を設計要件(固形分、粒度、粘度、含気率、色差ΔE など)へ翻訳。

  • 製造容易性(DFC):狙い値を“出せる設備と工程”に落とす(撹拌剪断、二次加熱の熱収支、充填時の含気管理など)。

  • 衛生設計:分解・洗浄・排水・死角ゼロ。汚れにくい形にすることが最安の品質保証。

  • 原料戦略:官能の寄与度が高い原料は複数サプライ+規格の上限下限を狭く。COAだけでなく入荷官能・迅速分析でブレを抑える。


2. 規格・標準:狙い値は“出る数値”で

  • 規格の三層

    1. 製品規格(微生物・理化学・アレルゲン・官能)

    2. 工程規格(温度・時間・pH・Brix・含水率・粘度)

    3. 設備規格(回転数、流量、差圧、メンブレンΔP 等)

  • 狙い値の置き方:ばらつきσを見て管理幅の中心から安全側に寄せる(Cp/Cpkの観点)。日替わり原料にはロバスト条件(温度×時間の窓)を設定。

  • MSA(計測システム解析):粘度/水分/色差/重量計の再現性・直線性を年次確認。官能は基準見本+パネル訓練で“人の測定器化”。


3. 安全と高品質の交点:HACCPを“おいしさ”まで拡張

  • CCP(例:中心温度、冷却プロファイル、金属検出/X線感度)

  • OPRP(例:pH・a_w・塩分での増殖抑制)

  • 官能CCPという考え方:分離・乳化・焦げ・えぐみ・離水など“おいしさの致命傷”を目視/触感/比重で即時判定→是正基準を明文化。


4. 工程安定化:SPCで“波”を読む

  • 重要特性のSPC:粘度、含気率、充填重量、シール強度、塩度などをXbar-R管理図で日々監視。

  • 狙い:Cpk ≥ 1.33を目標。逸脱時は5Why+再発防止を同日中にクローズ。

  • DOE(実験計画):新原料や増産時は2^k要因で最適条件を素早く確立(例:撹拌回転×滞留時間×ジャケット温度)。


5. 官能品質の作り込み:数値化でブレを潰す

  • JARスケール(ちょうど良さ)で甘味・酸味・塩味・食感を可視化。

  • トライアングルテストで原料変更の“気づかれ度”を判定。

  • 基準見本を冷凍/乾燥保存して日々の立ち上げ比較

  • ネガ官能辞書(青臭い/蒸れ臭/金属臭/油焼け/ざらつき)を作り、検品語彙を統一


6. 包装・冷鎖・賞味期限:最後まで品質を届ける

  • パッケージ:OTR/WVTR、シール強度、ピンホール率を監視。エッジ部補強で落下・角潰れ対策。

  • 冷鎖:搬送の温度ログを可視化(閾値逸脱=自動アラート)。

  • 賞味期限設定:実使用条件での実時間試験+加速試験を併用。品質劣化の**主因(酸化/離水/退色/香気飛び)**に沿った判定指標を選定。


7. サプライヤー品質:原料ブレは“入口で圧縮”

  • 承認/監査:規格・工程・衛生・トレーサビリティ・CAPAの点数化

  • 受入検査:温度・外観・官能・簡易理化学(Brix/pH/水分)をロットごと

  • 二者間改善:歩留まり×官能×歩留コストの共有KPIを設定(例:原料サイズ分布の最適化で破砕ロス▲)。


8. 品質コスト(COPQ):“不良の原価”を見える化

  • 内在不良(調整・再加工・歩留まり低下)

  • 外部不良(返品・値引き・回収・機会損失)

  • 測定・予防(校正、教育、監査、設計見直し)
    → 月次でCOPQ/売上をモニタし、“予防比率”を高める投資へシフト。


9. KPIダッシュボード(例)

  • 不良率(PPM/万個当たり)

  • Cpk(重要特性ごと)

  • 官能適合率(ロット判定)

  • 温度逸脱回数(製造/保管/配送)

  • クレーム率・再発率

  • リードタイム(立ち上げ~安定)

  • 教育完了率(OJT/官能パネル)

  • COPQ比率
    → 週次は現場ボード、月次は経営レビューで原因×対策×期限まで合意。


10. デジタル活用:紙から“気づき”へ

  • バッチ記録の電子化:温度・重量・粘度・金検/X線を自動収集

  • 閾値アラート:外れ値検知でライン停止までの時間短縮

  • トレーサビリティ:原料→中間→最終→出荷のロット紐づけを3クリックで追跡。

  • 標準動画/QR:立ち上げ・洗浄・切替の動画手順で“人依存”を解消。


11. チェックリスト

11-1. 高品質チェックリスト(出荷前)

  • ☐ 微生物・理化学規格OK

  • ☐ 官能(色/香/味/食感)合格、基準見本と一致

  • ☐ 包装:外観・シール・印字良好、ピンホールなし

  • ☐ アレルゲン表示・ロット・期限のダブルチェック

  • ☐ 温度記録/金検・X線ログ保存

  • ☐ 是正処置の完了/承認記録あり

11-2. 8D問題解決シート(要約)

  • D1チーム / D2問題定義 / D3暫定処置 / D4原因特定 / D5恒久対策 / D6再発防止 / D7学習展開 / D8祝う(定着)

11-3. 30-60-90日 改善ロードマップ

  • 30日:重要特性の可視化(SPC開始)、基準見本の整備、官能パネル訓練

  • 60日:Cpk<1.33の特性にDOE実施、包装シール強度の再設定、温度ログ自動化

  • 90日:COPQを月次化、サプライヤー点数化と共同改善、賞味期限妥当性の再検証


12. ケーススタディ

冷蔵デザート工場

  • 課題:離水と食感ブレでクレーム率0.45%

  • 施策:ゲル化温度の狙い値再設定、充填時の含気を±0.5%にSPC管理、冷却曲線を2段冷却

  • 結果:官能適合率+9pt、クレーム率0.12%、歩留まり+1.8%、COPQ▲28%


高品質は“仕組み×人”で回し続ける

  • 設計でブレない条件を決め、計測で見える化し、標準作業で再現。

  • 官能と安全を同じ土俵で管理し、SPC×DOE×MSAで科学的に改善。

  • ダッシュボードとレビューで経営と現場を接続し、COPQを下げ続ける

 

 

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第19回食品加工雑学講座

皆さんこんにちは!

合同会社Alba、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~衛生管理~

 

食品加工業者のための衛生管理 完全ガイド——「安全・効率・ブランド」を同時に高める実務

食品加工の衛生管理は、コストではなく投資です。微生物リスクを抑え、歩留まりと稼働率を上げ、クレームや回収を未然に防ぐ。この記事では、工場設計から人・モノの動線、清掃消毒、環境モニタリング、アレルゲン、トレーサビリティまで、今日から現場で使える形で整理しました。


1. 考え方の土台:PRP × HACCP × FSMS(PDCA)

  • PRP(前提条件プログラム):清掃・消毒、害虫対策、給排水、設備衛生、個人衛生、原料受入など“土台”の仕組み。

  • HACCP:製造フローごとの危害要因分析→**CCP(重要管理点)**設定→監視・記録・是正

  • FSMS(食品安全マネジメント):内部監査、教育、是正予防(CAPA)、マネジメントレビューでPDCAを回す枠組み

ポイント:PRPが弱いと、HACCPでどれだけ管理しても“水漏れバケツに水を注ぐ”状態になります。まずPRPを磨く。


2. 工場設計とゾーニング:汚染を“起こさない動線”

ゾーン区分(例)

  • 低リスク(原料・外装)中間(下処理・加熱前)高リスク/ハイケア(加熱後・RTE/包装)

設計・動線の要点

  • 人の流れ:更衣→手洗い→エアシャワー→粘着ローラー→ハイケアへ。一方通行で逆流を禁止

  • 物の流れ:原料と製品、未洗浄器具と洗浄後器具を交差させない

  • 空調:ハイケアは陽圧、外周は陰圧寄り。天井→床の一方向気流、ドレンの勾配で溜まりを作らない。

  • 色分け:モップ・ブラシ・エプロン等をゾーン別カラーで完全分離。

  • 防虫・防鼠:二重扉、網戸、隙間シール、捕獲トラップのマップ化


3. 個人衛生:行動標準を“型化”する

  • 健康確認:出社時の体調申告・発熱/嘔吐の就業制限、外傷は防水絆創膏+手袋二重

  • 身だしなみ:爪短く/無装飾、時計・指輪NG、髪は完全覆い

  • 手洗い手順(掲示用):①前洗い→②洗剤で30秒→③指先/指間/親指/手首→④流水30秒→⑤エア乾燥→⑥消毒→⑦手袋装着。

  • 更衣:私物と作業服の接触禁止、外出時の作業服着用禁止。

  • 教育:入社時+年次+増産・レイアウト変更時のリフレッシャー実演とチェックリストで定着。


4. 原料・資材の受入と保管:入口で品質を決める

  • サプライヤー承認:規格書・工程/衛生の確認、監査・COA(成分/微生物)。

  • 受入検査:温度・外観・異物・ロット・賞味/使用期限、アレルゲン書類の突合。

  • 保管先入先出(FIFO)、アレルゲン/非アレルゲンの区画分離、温度帯(冷蔵/冷凍/常温)を明確化。

  • 搬送:冷蔵ドック/短時間搬入、結露対策(温度差是正)。


5. 清掃・洗浄・消毒(SSOP):TACTで考える

TACT=温度(Temperature)・作用(Action/機械力)・化学(Chemistry/濃度)・時間(Time)

基本ステップ(掲示・教育用)

  1. 前処理(粗取り)

  2. 予備洗浄(ぬるま湯高流量)

  3. 洗剤塗布(アルカリ/酵素/界面活性)

  4. 物理作用(ブラッシング/フォーム浸漬)

  5. リンス

  6. 消毒(次亜/第四級アンモニウム/過酢酸など、希釈と接触時間厳守)

  7. 乾燥(自然/熱風)、組立時の異物確認

CIP/COP

  • CIP(定置):配管・タンクは流速・温度・濃度のレシピ化

  • COP(分解洗浄):分解→浸漬→ブラッシング→乾燥→再組立、工具管理台帳で締付け抜けを防ぐ。

検証と検証後の確認

  • 検証(バリデーション):新製品/新設備導入時、マイクロ/目視/タンパク質試験で方法の妥当性確認。

  • 確認(ベリフィケーション):ATPふき取り・一般生菌/大腸菌群の定期モニタ、記録のレビュー。

頻度マトリクス例

  • 接触面:毎シフト(中間洗浄+終業完全洗浄)

  • 非接触面・床壁:毎日/毎週

  • 高所・ダクト:月次/四半期


6. 環境モニタリング(EMP):“見えない汚染”を可視化

  • ゾーン設計

    • Z1 直接接触面(充填ノズル、刃、コンベヤベルト)

    • Z2 近接面(機械の外装、操作盤)

    • Z3 周辺環境(床・排水・車輪)

    • Z4 外周(倉庫、通路)

  • 対象微生物:製品特性に応じてListeria属、サルモネラ、カビ/酵母など。

  • 頻度:ハイケアのZ1/Z2は毎日~週次、Z3/Z4は週次~月次

  • トレンド化:部位×菌種のヒートマップ閾値で**CAPA(是正予防)**を回す。


7. 温度管理と冷却:時間×温度=安全

  • CCP例:中心温度到達、急速冷却、チルド保管、配送温度。

  • 記録:データロガー/自記温度計、校正計画(年1回など)を明確化。

  • 解凍:冷蔵解凍/ランニングウォーター、温度帯逸脱時の廃棄基準を事前定義。

  • 冷却:バッチ厚・風量の標準化、詰め込み禁止トレイ間隔の遵守。


8. アレルゲン管理:交差接触を“ゼロ設計”

  • マッピング:原料→工程→設備→器具→人→最終製品までフローマップ

  • 分離:時間(先行順序:非アレルゲン→アレルゲン)/空間(専用ライン・器具・保管)。

  • 表示:一括表示・注意喚起の二重チェック(資材校了→現物検品)。

  • 切替清掃の妥当性ELISA/たんぱく質試験目標閾値以下を確認、記録。


9. 異物対策:発生源を潰す

  • 物理異物:金属検出機/X線、磁選機、ふるい、刃物・工具管理(番号/点呼)。

  • ガラス・プラ:照明カバー防破片、文具の金属化/一体化、粘着クリーナーの毛抜け対策

  • 繊維・毛髪:キャップ完全着用、粘着ローラー、ユニフォームの洗濯仕様統一。


10. 害虫・小動物対策(IPM)

  • 構造:隙間封鎖、排水トラップ、植栽の整理。

  • モニタ:ライトトラップ/ローチステーションの配置図と捕獲記録

  • 是正:外注業者のレポートをCAPAに直結、頻度・薬剤ローテを記録。


11. 供給水・圧縮空気・氷・蒸気

  • :飲用適合、末端の残留塩素/微生物/一般化学を定期測定。

  • 圧縮空気食品接触用途は滴下・油分・粒子の管理(フィルタ、ドレン自動排出、配管ドレンポケット排除)。

  • 氷・蒸気:製氷機の生物膜対策、ボイラ薬品の食品適合


12. 変更管理・設備衛生(衛生設計)

  • 衛生設計:隙間・ねじ露出・死角を排し、排水性分解容易性を確保。

  • 変更管理:ラインレイアウト/速度/包材変更時は危害要因再評価→必要なら検証

  • 保全:潤滑剤のフードグレード化、切粉・油ミストの養生


13. 記録・トレーサビリティ・リコール

  • 一歩前・一歩後のロット追跡、3時間以内を目標に模擬リコール。

  • 記録の原則その場・その時・消せない形(紙なら訂正ルール、電子なら権限管理)。

  • 顧客/行政連絡フロー:テンプレ化(責任者・窓口・想定Q&A)。


14. KPIと見える化:品質を“運用指標”で回す

  • 例:ATP不適合率、EMP陽性件数、温度逸脱回数、異物苦情率、清掃時間/稼働比、CAPA遅延率、教育完了率

  • 週次のフロアボードと月次の経営レビューで、現場と経営の視点を接続。


15. 食品安全カルチャー:仕組み×行動×発言のしやすさ

  • リーダーの現場対話(衛生ミーティングに必ず参加)

  • 躊躇なく報告できる雰囲気(“止める勇気”を褒める)

  • 好事例の水平展開(写真+手順の社内SNS化)


16. そのまま使えるテンプレ(コピーOK)

16-1. SSOPひな形(抜粋)

  • 目的/適用範囲/責任/使用薬剤と希釈/TACT条件/手順(7ステップ)/頻度/安全注意/記録様式(担当・開始/終了・確認者)

16-2. 環境モニタリング計画(抜粋)

  • サイトマップ(Z1~Z4)/採取点リスト/頻度表/判定基準/陽性時フロー(封じ込め→調査→是正→再採取→レビュー)

16-3. アレルゲン切替チェックリスト(抜粋)

  • 原料・包材撤去→器具分解→洗浄消毒→ELISA/たんぱく質拭き取り→陰性確認→ライン承認→生産再開

16-4. 日/週/月ルーティン(例)

  • 毎日:手洗い監査、CCP温度記録、ATPスワブ、床排水洗浄

  • 週次:Z2/Z3微生物、在庫ローテ監査、トラップ点検

  • 月次:高所/換気ダクト洗浄、金検/X線の感度確認、教育・模擬リコール


衛生管理は“止めない仕組み”

衛生は「やる/やらない」ではなく、止めない仕組みで成果が出ます。

  • PRPで土台を固め、HACCPでリスクに資源集中、FSMSで回し続ける

  • 設計(ゾーニング・動線)→運用(SSOP・EMP・温度管理)→人(教育・カルチャー)を一本の線で結ぶ。

必要であれば、貴社フロー図をベースにしたHACCP記録様式、SSOP類、EMPマップ、アレルゲン切替手順書まで作成します。製品群と設備図面(ラフでOK)を教えていただければ、現場に合わせてカスタムします。

 

 

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